キリムの歴史
宮殿や寺院を彩り、イラン(ペルシャ)の精神性までをも垣間見るかのような絨毯と対極に存在するのが、キリムといえるでしょう。遊牧民がテント・敷物・袋ものとして、実用するために制作されたキリムにはデザイン図案もなく、家々で母から娘へ口伝によって受け継がれ、卓抜した腕を持つ女性は遊牧民達の重要な情報でもありました。それは名家へ嫁ぐきっかけでもあり、キリムの質や量が財産を意味するため、12歳位になると少女は本格的に織機とむきあい、持参金がわりのキリムを織り続けていきます。
織っていく際に使用する、織目を詰める道具には家紋を入れたものもあることから、《織る》という仕事が人々と密接に関わり合い、いかに共鳴しあっているかがお分かりいただけるでしょう。華麗なペルシャ絨毯の美しさがヨーロッパの王侯貴族にもてはやされた19世紀〜20世紀初頭、数少ないコレクターはキリムの素朴で力強いデザインに驚き、《用の美》を啓蒙していくことになります。
分かりやすく圧倒的な美しさを競うペルシャ絨毯に遅ばせながら、徐々にキリムが一般家庭に浸透した分、ヨーロッパの近代工業化の波にキリムは飲み込まれることなく、各部族、産地の特徴は今もなお厳格に守られ続け、《伝統》といえるべき手作業の技がキリムに紡がれています。
ペルシャ絨毯(キリム- Kilim)
ペルシャのキリム( Kilim)
キリムの染色
キリムのメインの色は雄大な大地を思わせる、豊かな《赤色》です。
アカネやザクロ、昆虫のコチニールなど天然染料の独特の風合いは、《赤色》といっても、少し青みががっていたり落ち着いた貫禄のある色調であったりと表情があります。
鮮やかな《赤色》でも、特に冴えわたった《赤色》はアカネなどの場合、長い年月を経てきた根ほど色が濃く発色いたします。
19世紀半ばに化学染料が登場したので、さまざまな産地のいろいろなクラスのキリムとたくさん触れ合うことで、特徴や知識、鑑識力が自然と備わりましょう。起毛している絨毯に比べ、キリムは平織りのため、手入れも非常に簡単で丈夫です。
洗えば洗うほど色が冴えわたるので、古来より洗濯好きな日本人の習慣に適応した《女性に味方》な逸品です。
洗うときのポイント天然染料のためお湯を使用すると、にじみます。
必ず《水洗い》を基本にしてください。水洗いで80%の汚れは落ちます。
お風呂場で広げ、足で踏みつけて汚れを出す《踏み洗い》、又はデッキブラシなどで毛の流れにそって、洗ってくださって結構です。
中性洗剤は色がにじみ出てしまうので、御使用を避けてください。ウールの場合塩は色落ちを防ぐだけでなく、キリムになじんだ、落ち着いた色調にする効果もあります。
シルクのキリムの場合日本の藍染の織物同様、酢を用いて色止めをおこない、風合いを保ち続けることができます。
キリムの見分け方
風土や生活、文化風習の違いの中でデザイン、織り、素材などの変化にとみ、民族や産地の違いをも面白さとして楽しむことのできるキリムはテント、敷物、祈祷用ラグ、馬背カバーなど遊牧民の生活必需品です。
《用の美》として発展してきたキリムは、丁寧な仕上がりによってどのような風雪にも耐える頑丈な仕上がりが特徴ですが、その表面は艶をもった、しなやかな肌触りに驚かれるでしょう。キリムを幾枚か拝見してみると、目が詰まっていることが頑丈なキリムの秘訣だと分かってきます。
織機による打ち込みが強くなされているものほど、丁寧に仕上がっているといえましょう。しかし、アンティークのキリムには、袋などをほどき、絨毯用につなぎ合わせた物もあります。その際には繋ぎ合わせた部分、房(フリンジ)に近いあたりの端の処理の始末、裏面の糸の強度などを注意して拝見すると、自ずと分かってきます。
シルクのキリム(一畳くらいの大きさ)=ウール用洗剤大さじ2杯+酢大さじ1杯
ウールのキリム(一畳くらいの大きさ)=ウール用洗剤大さじ2杯+塩大さじ2杯 詳細はメンテナンスを参照下さい。
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